「もし、がんになったら家計は破綻するのか?」
人事や給与計算の担当として、病気による長期休職の手続きや、復職に向けた面談を何度も経験してきました。その中で確信したのは、「がん=人生の終わり」でもなければ、「がん=即座に全財産を失う」わけでもないということです。
世の中には不安を煽るがん保険の広告が溢れていますが、実務を知る立場から見れば、備えの優先順位を間違えている人が少なくありません。
今回は、人事の現場で見た「病気と仕事」のリアルな数字をもとに、がん保険の本当の必要性を考えます。
1. 働けなくなっても「無給」にはならない
「がんになったら収入が途絶える」という不安は、会社員であれば半分は間違いです。僕たちが毎月払っている社会保険には、最強の休業補償**「傷病手当金」**があります。
- 給与の約3分の2が保障される: 最長1年6ヶ月の間、およそ月給の67%が支給されます。
- 非課税というメリット: 傷病手当金は非課税なので、所得税や住民税がかかりません。手取りベースで考えると、働いている時の8割近い金額が確保できるケースも多いのです。
この制度があるおかげで、治療に専念しながらも、日々の生活費を維持することが可能です。
2. 現場で見た「がん治療と仕事」の変化
一昔前は「がんは入院して治すもの」でしたが、現在は**「通院しながら治すもの」**へと劇的に変化しています。
- 入院日数の短縮: 多くのケースで入院は短期間で終わり、あとは通院での抗がん剤治療や放射線治療がメインになります。
- 両立支援制度の充実: 人事の実務では、時短勤務や時差出勤、テレワークを組み合わせた「治療と仕事の両立」を支援することが増えています。
つまり、「長期入院でお金が飛んでいく」というリスクよりも、**「通院治療費がジワジワとかかり続ける」**というリスクの方が、現代においてはリアルなのです。
3. 僕が「がん保険」を最低限に絞る理由
これらを踏まえ、[1,000万円の資産(#01)]がある僕たち夫婦は、がん保険を以下の考え方で設計しています。
- 「1日いくら」の入院給付金は不要: 入院が短期化している今、ここにコストをかけるのは非効率です。
- 「診断一時金」を重視: がんと診断された瞬間に100万円といったまとまったお金が入るタイプなら、[先進医療(#13)]の支払いや、収入減の補填に柔軟に使えます。
- 資産が最大の保険: 究極的には、現金や新NISAで積み上げた資産こそが、どんな用途にも使える最強の「無配当がん保険」になります。
まとめ:不安に名前をつけて「仕分け」する
「がんが怖い」という感情を、「医療費への不安」と「収入減への不安」に分けて考えてみてください。
- 医療費 → [高額療養費制度(#13)]で月額上限が決まっている。
- 収入減 → 傷病手当金で約3分の2がカバーされる。
- 不足分 → 今ある資産と、安価な掛け捨ての診断一時金で備える。
このように「仕分け」ができれば、月々数千円、数万円もの高いがん保険料を払う必要がないことに気づくはずです。その浮いたお金を[資産運用(#04)]に回す方が、結果としてあなたと家族をより強固に守ることになります。
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